喘息の治療薬について

治療薬による副作用死の背景に医師の認識不足も見逃せない

ぜんそく治療薬による副作用死が認定され、薬害問題に取り組む医師や弁護士らの団体が厚生労働省に薬の販売中止と製品回収を要望した。
医療情報部  石塚 人生

この薬は、ぜんそく発作を抑える気管支拡張剤の吸入薬「フェノテロール」(商品名・ベロテックエロゾル)。市民団体「薬害オンブズパースン会議」によると、この薬を使ったためと見られる死亡例の情報は、これまでに21件寄せられた。このうち5人について、同省所轄の「医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構」に救済を申請、3人が「副作用による心肺停止が原因」と認定された。
この薬は、97年に厚生省(当時)の緊急安全性情報で、小児への使用が原則禁止され、成人でも、使用は他の薬が無効の場合に制限された。

それ以前の5~34歳のぜんそくによる死亡率は、薬の販売が始まった85年から跳ね上がっていたが、これを境に、薬の販売量が急減し、同じ年齢層の死亡率も急低下した。同会議は「薬の販売量と、ぜんそく死亡率は明らかな関連がある」などとして、販売中止と回収を求めた。同会議の浜六郎医師は「(緊急安全性情報で使用を認められた)他の薬が無効な場合、患者は重症で酸素欠乏状態にあり、この薬の使用は最も危険」と指摘している。
この薬には、より安全性が高いとされる気管支拡張剤の代替薬もある。危険性を強く疑わせるデータがある以上、患者の安全を守るため、厚生労働省は販売中止も含め、迅速な対策を講じるべきだ。

同省は「九七年の安全性情報は適切だと考えており、引き続き安全対策に努力する」とし、メーカーは「使用法を守れば安全な薬」としている。
緊急安全性情報などでの警告の後も、安易に処方し続けた医師もおり、責任は重い。ぜんそくは慢性疾患で、「定期的にこの薬が必要な患者を、お得意様にしている医療機関もある」(都内の医師)。

ぜんそく治療に対する医師の認識不足も見逃せない。寄せられた死亡例の大半は、「日常の適切な治療が行われていなかった」(浜医師)という。
海外のぜんそく治療の流れは、原因となる気道の炎症を抑えることにある。吸入ステロイド剤が有効で、欧米では広く使われている。一昨年に行われた患者調査では、吸入ステロイドを使用しているのは、スウェーデンの場合、成人で35%、小児では42%に上った。一方、日本はそれぞれ12%、5%に過ぎない。医師と患者双方に、ステロイドの副作用への「アレルギー」が根強いことが一因だ。ぜんそく死亡率は、日本はスウェーデンの数倍も高い。 
一方、フェノテロールは、ぜんそく発作時に使う薬で、あくまで対症療法だが、依存する患者も少なくない。昭和大医学部の安達満教授は「吸入ステロイド剤は安全性も高い。この薬で日常管理を続ければ、気管支拡張剤はほとんど必要なくなり、ぜんそく死も減る」と指摘する。
ぜんそくによる死亡は、国内で年間5.000人前後に上る。治療の知識が普及していないために失われる命もある。正確な情報を伝える医師の責任は大きい。